内山節氏(哲学者)

 これからの地域は、生活の面だけではなく、生産や流通の面でも、支え合い、結びあう力を創造していかなければいけないのではないかと思っていた。そうでなければグローバル化する経済に地域は従属してしまうだけではなく、多くの地域は市場競争のなかで振り落とされていってしまうだろう。「おむすび通貨」の成功を私は祈っている。それは地域経済をも、支え合う市場をつくることによって回していこうとする試みである。しかも地域外の人々も加わることによって、多くの人々が連帯して地域経済を守る仕組みをも視野のなかに収めている。素晴らしい実験である。かつてゲゼル経済学のなかで提起された地域通貨が、資本主義と市民社会、近代国家が行き詰まるなかで、この豊田の地で新しいかたちをつくりだそうとしている。その成功は、世界の人々に新たな社会の方向性を示すことになるだろう。東日本大震災からの復興にも、ひとつの可能性を提起することになるだろう。私は、創造的実験がいま豊田の人々のなかからはじまったことに、心から感動している。